CASE STUDY

【実例】警察署で身元確認をした日|あの日、電話が鳴った・第二話

この記事を書いた人

村岡葬研葬儀社 代表 村岡 淳次

警察案件対応30年以上。検視・検案・行政解剖・司法解剖後のご遺体搬送、ご安置、ご葬儀まで数多く対応。

警察から「身元確認をお願いします」と言われた方へ

警察から突然、「身元確認をお願いします。」と言われることがあります。

警察が確認している方について、ご家族などによる身元確認が必要になった場合です。指定された警察署などへ出向き、確認を求められることがあります。

ただし、身元確認が終わったからといって、すぐにご遺体を連れて帰れるとは限りません。その後も検視・検案が行われたり、状況によっては行政解剖・司法解剖となったりすることがあります。

ご遺体がいつ返還されるのか。葬儀社はいつ決めればいいのか。何を準備すればいいのか。

分からなくても当然です。

ここからは、警察案件に30年以上携わってきた中で何度も見てきた、「身元確認」という時間についてお伝えします。

「身元確認をお願いします」

警察から電話があった。

父の名前を言われた。

そして、「身元確認をお願いします。」と言われた。

電話を切ってからも、その言葉の意味がよく分からなかった。

身元確認。何を確認するのか。なぜ自分が行くのか。

考えれば分かる。

でも、考えたくなかった。

警察署へ

車で警察署へ向かった。ほとんど何も覚えていない。

何時に家を出たのか。どの道を通ったのか。途中で何回信号に止まったのか。覚えていない。

ただ、警察署の建物が見えた時、急に車を停めたくなったことだけは覚えている。

ここへ入ったら、何かが決まってしまう。そんな気がした。

駐車場に車を停める。エンジンを切る。すぐには降りなかった。

ハンドルに両手を置いたまま、正面玄関を見ていた。人が入っていく。人が出てくる。自転車に乗った警察官が横を通る。

何も特別なことは起きていない。ごく普通の昼間だった。

時計を見る。行かなければならない。

ドアを開けた。

「電話をいただいた者です」

受付で名前を伝えた。

「身元確認の件で電話をいただいた○○です。」

受付の警察官が電話を取った。小さな声で何かを話している。

「少々お待ちください。」

長椅子に座った。目の前には交通安全のポスター。壁には時計。人が何人か通り過ぎる。そのたびに顔を上げた。どの人が自分を呼びに来るのか分からない。

数分後。一人の警察官がこちらへ歩いてきた。

「○○さんですか。」

「はい。」

「こちらへどうぞ。」

立ち上がった。

まだ、どこかで思っていた

廊下を歩く。警察官の少し後ろをついていく。靴音だけが聞こえる。

カツ。カツ。カツ。

途中で何度か人とすれ違った。誰もこちらを見ない。それが妙にありがたかった。

この時点でも、まだ心のどこかで思っていた。

違う人かもしれない。父の財布を誰かが持っていただけかもしれない。何かの手違いかもしれない。同姓同名かもしれない。

警察が間違えるはずがない。そんなことは頭では分かっている。

それでも、ほんの少しだけ、「違うかもしれない」を残していた。

たぶん、それがなければ、あの廊下を歩けなかった。

「こちらです」

警察官が立ち止まった。

「こちらです。」

その先のことは、妙に細かく覚えている。照明の白さ。ドアの色。警察官の声。自分の呼吸。

そして、確認する。

知っている顔だった。何十年も見てきた顔だった。

子どもの頃から知っている。怒られた顔。笑っていた顔。酒を飲んで赤くなった顔。

間違えるはずがない。父だった。

警察官が静かに聞いた。

「お父様で間違いありませんか。」

答えようとした。声が出なかった。

もう一度、顔を見る。

ここへ来るまで残していた、「違うかもしれない」が全部なくなった。

しばらくして、ようやく言葉が出た。

「……はい。」

少し間が空いた。

「父です。」

「父です。」

身元確認というのは、警察にとっては必要な確認の一つなのだと思う。

でも、家族にとっては違う。

電話で、「亡くなっています」と言われても、どこか現実ではない。警察署へ向かっている間も、まだ現実ではない。廊下を歩いている時でさえ、心のどこかに逃げ道がある。

でも、自分の目で見て、自分の口で、「父です。」と言った瞬間、その逃げ道がなくなる。

父が亡くなった。

その事実を、初めて自分で認めることになる。

それでも、現実は止まってくれない

確認が終わる。座る。警察官から説明を受ける。

検視。検案。死因。返還。場合によっては行政解剖や司法解剖。

聞いたことのない言葉が続く。さっき父の顔を確認したばかりなのに、もう次の話が始まっている。

「はい。」「はい。」

何度も返事をする。でも、どこまで理解していたのかは分からない。

その時、初めて思う。

父は、いつ帰ってくるんだろう。

身元を確認した。父だと分かった。だったら、一緒に帰れると思っていた。

でも、そうとは限らない。

検視や検案が終わっていなければ、まだ帰れない。解剖が必要になれば、さらに時間がかかることもある。

家族なのに、連れて帰れない。

それも、多くのご家族が初めて知る現実です。

警察署でご家族から実際によく聞かれる質問があります

私は30年以上、警察案件に携わってきました。警察署でご家族から実際によく聞かれる質問があります。

「顔を見なければいけませんか。」

「私一人で行っても大丈夫ですか。」

「確認が終わったら連れて帰れますか。」

「今日、帰ってきますか。」

「この後は何をすればいいんですか。」

どれも当然の質問です。初めて経験することなのですから、分からなくて当たり前です。

そして、私が長くこの仕事をしていて感じることがあります。

身元確認のために警察署へ入っていく時と、確認を終えて出てこられる時。ご家族の表情が違うことがあります。

入る時には、まだどこかに、「何かの間違いであってほしい」が残っている。

でも、出てこられた時には、それがない。

その表情を見るたび、身元確認という言葉の重さを感じます。

葬儀社へ連絡するのは、そのあとです

身元確認後、警察から、「葬儀社は決まっていますか」「返還の際に葬儀社へ迎えに来てもらってください」などと説明を受けることがあります。

ここで初めて、葬儀社を探し始めるご家族も少なくありません。

その時点で、葬儀の内容まで決める必要はありません。まず必要なのは、現在、警察で何が行われているのかを整理することです。

村岡葬研葬儀社へ警察案件のお電話をいただいた際、私が最初に必ず確認するのは、「警察が介入していますか。」です。

そして、「警察から今、どこまで説明を受けていますか。」と確認します。

検視は終わったのか。検案はこれからなのか。行政解剖・司法解剖の話が出ているのか。ご遺体の返還予定は決まっているのか。

そこが分かれば、次に何をすればいいのかが見えてきます。

電話口で沈黙が10秒以上続くことは珍しくありません

「身元確認をしてきました。」

そこまで話して、言葉が止まってしまう方もいます。電話口で沈黙が10秒以上続くことは珍しくありません。

私は、その沈黙を急かしません。無理に言葉を埋める必要もないと思っています。

少し待つ。

すると、ぽつりと、「父だったんです。」と話される。

そのあとでいい。葬儀の話は、そのあとで十分です。

警察での身元確認についてよくある質問

身元確認には誰が行けばいいですか?

誰による確認が必要になるかは、発見された状況や警察の判断などによって異なります。警察から身元確認を求められた場合は、まず、「誰が行けばよいのか」を担当警察官に確認してください。ご家族の誰が行くべきか分からない場合も、自己判断せず警察へ確認するのが確実です。

身元確認へ行く時に必要な持ち物はありますか?

必要なものは状況によって異なる可能性があります。警察から連絡を受けた際に、「身元確認へ伺う際、持参するものはありますか」と確認してください。本人確認書類などを求められた場合は、警察の案内に従います。

身元確認では必ず顔を見るのですか?

身元をどのような方法で確認するかは、発見時の状況やご遺体の状態などによって異なります。必ず同じ方法で行われるとは限りません。「顔を見るのが怖い」「自分にできるか分からない」という場合は、事前に担当警察官へその気持ちを伝えてください。

身元確認が終われば、ご遺体をすぐ連れて帰れますか?

必ずしも、すぐに返還されるとは限りません。身元確認後も検視・検案などが続く場合があります。また、状況によって行政解剖・司法解剖などが行われる場合もあります。そのため、「ご遺体の返還予定はいつ頃ですか」と警察へ確認してください。返還予定が分かれば、葬儀社側でもお迎えの準備を進めることができます。

身元確認後、すぐ葬儀社を決めなければいけませんか?

身元確認をした瞬間に、ご葬儀の内容まですべて決める必要はありません。ただし、ご遺体の返還に伴って搬送やご安置が必要になるため、返還予定が見えてきた段階で葬儀社へ相談しておくと、その後が進めやすくなります。警察から「葬儀社を決めてください」と言われた場合については、第一話「あの日、警察から電話が鳴った。― 葬儀社を決めてください」で詳しくお伝えしています。

行政解剖・司法解剖になった場合はどうなりますか?

身元確認後に解剖が行われる場合、その種類や流れは案件によって異なります。特に司法解剖は捜査・司法手続きとも関係するため、ご家族や葬儀社だけで返還時刻を決めることはできません。警察から「行政解剖になります」「司法解剖になります」と言われた場合は、まず今後の予定と、ご遺体返還の見通しについて確認してください。

身元確認後に確認しておきたい4つのこと

警察から「身元確認をお願いします」と言われた場合、その後の状況は案件によって異なります。身元確認を終えたら、分かる範囲で次の4点を確認してください。

  • 検視・検案は終わっているか
  • 行政解剖・司法解剖が行われる予定はあるか
  • ご遺体はいつ返還される予定か
  • 葬儀社がお迎えに伺う場所はどこか

全部聞けなくても大丈夫です。警察案件に慣れた葬儀社へ現在の状況を伝えれば、必要な確認事項を整理しながら、その後のご遺体搬送・ご安置へ進むことができます。

担当スタッフより

「身元確認」。仕事をしている私たちにとっては、警察案件の中で使われる言葉の一つです。

でも、ご家族にとっては、そんな簡単な言葉ではありません。

警察官から、「お父様で間違いありませんか。」と聞かれる。そして、自分の口で、「はい。父です。」と答える。

その瞬間に、それまで心のどこかに残っていた、「何かの間違いかもしれない」がなくなります。

私は30年以上この仕事をしていますが、この瞬間だけは、何年やっても軽く考えることができません。

だから、身元確認を終えたばかりのご家族に、私は葬儀の説明を急ぎません。

まず、今どういう状況なのか。故人様はいつ戻ってこられるのか。今決めなければならないことは何なのか。逆に、今日決めなくてもいいことは何なのか。

それを一つずつ整理します。

警察から突然、「身元確認をお願いします」と言われたら、何をすればいいのか分からなくて当然です。

村岡葬研葬儀社では、検視・検案、行政解剖・司法解剖後のご遺体のお迎え、ご安置、ご葬儀まで、警察案件に対応しています。

神奈川県・横浜市・川崎市・湘南エリア、東京23区で、警察から突然連絡を受けてお困りの場合はご相談ください。

「あの日、警察から電話が鳴った。」警察案件実録シリーズ

第一話「葬儀社を決めてください」

警察から突然「葬儀社を決めてください」と言われたご家族が、何を確認し、どう動けばよいのかを実録形式でお伝えしています。

第二話「身元確認をお願いします」(この記事)

第三話「ご遺体を引き取りに来てください」へ続く。

※掲載許可をいただいたうえで掲載しています。プライバシー保護のため、内容の一部を変更・編集しています。

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