
〜突然の警察介入時に遺族が知っておくべき「搬送・法律・尊厳」の真実〜
はじめに:日常が「警察事案」に変わる瞬間
私たちの生活は、常に死と隣り合わせです。しかし、それが「警察の介入を伴う死」であったとき、平穏な日常は一瞬にして断絶し、見知らぬ手続きの渦に巻き込まれます。
「朝、仕事に出かけたはずの家族が交通事故に遭った」 「一人暮らしの親と連絡が取れず、警察官立ち会いで解錠したら亡くなっていた」 「自ら命を絶つという、最も悲しい別れを選んでしまった」
こうした事態を、専門用語で「異状死」と呼びます。そして、この瞬間に直面したご遺族が、パニックの中で真っ先に突きつけられる現実的な問題が「ご遺体の搬送」です。
「警察が来たのだから、警察がなんとかしてくれるだろう」 「警察の車で送ってもらえるのではないか?」
そう考えるのは無理もありません。しかし、現実は異なります。この記事では、警察車両による搬送の限界と、その後のご遺体の尊厳を左右する「葬儀社による引き取り」の真の重要性について、400件以上の警察案件に携わってきた実務家の視点から、どこよりも詳しく解説します。
第1章:警察車両の役割と法的境界線
なぜ警察は、ご遺体を自宅や安置施設まで運んでくれないのでしょうか。これには明確な法的・制度的な理由があります。
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第2章:警察署へのお迎えにおける「専門性」の差
ご遺族が慌てて電話帳やネットで葬儀社を探す際、陥りやすい罠があります。それは「葬儀社ならどこでも警察署まで迎えに来てくれる」という誤解です。
2-1. 一般的な葬儀社が直面するハードル
多くの葬儀社は、病院で亡くなったケース(死因が特定されており、衛生状態が安定しているケース)を主戦場としています。そのため、警察署からのお迎えには以下のような理由で難色を示す、あるいは対応できない場合があります。
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2-2. 専門葬儀社が持つ「特殊装備」と「知識」
一方で、警察案件を専門とする葬儀社は、お迎えの車両からして異なります。 強力な消臭・除菌システム、ご遺体の状態を悪化させないための特殊冷却資材、そして何より「どのような状態の故人様であっても、尊厳を持って接する」ための訓練を受けたスタッフが揃っています。
警察署へのお迎えは、単なる「ピックアップ」ではありません。現場の状況を瞬時に把握し、ご遺族に代わって警察官から必要な情報を聞き出し、その後の手続きをスムーズに進めるための「高度なコンサルティング」の場でもあるのです。
第3章:なぜ「1分1秒」の引き取りが重要なのか
警察介入の案件において、時間は何よりも残酷な敵となります。ここでは、生理的な視点から引き取りの緊急性を説明します。
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第4章:警察署内での「やり取り」を代行する
ご遺族が最も疲弊するのが、警察署内でのやり取りです。事件・事故の直後、悲しみに暮れる中で受ける事情聴取や書類の手続きは、精神的な二次被害になりかねません。
- 4-1. 刑事・鑑識とのスムーズな連携
専門葬儀社は、署内のどこへ行き、誰に挨拶し、どの書類を確認すべきかを熟知しています。 「検案書(死亡診断書に代わるもの)はいつ発行されるのか」「検案料(警察へ支払う実費)はいくらなのか」「預けている遺品はいつ返還されるのか」。 これらの確認をご遺族に代わっておこなうことで、ご遺族は警察官と向き合う時間を最小限にし、大切な家族との最期の対面に集中することができます。
- 4-2. 事情聴取の合間の「止まり木」として
事情聴取を終えたご遺族が、警察署の廊下で一人立ち尽くしている光景を、私たちは何度も見てきました。そんな時、「お迎えの車が到着しました。これからのことは私たちにお任せください」という一言が、どれほどご遺族の心を支えるか。 専門の搬送スタッフは、精神的なケアを担うカウンセラーとしての役割も果たしているのです。
第5章:見落とされがちな「費用」と「法的書類」の真実
警察案件では、通常の葬儀では発生しない特殊な費用や手続きが存在します。これを事前に知っておくことで、金銭的なトラブルを防ぐことができます。
- 5-1. 死体検案書と「検案料」
警察が介入した場合、医師が発行するのは「死亡診断書」ではなく「死体検案書」です。 これを作成するためには、監察医や警察医による検案が必要となり、その費用(検案料)は原則としてご遺族の負担になります。地域によって異なりますが、数万円から、解剖が伴う場合は10万円を超えることもあります。これらは葬儀費用とは別に、警察(または医師会)へ直接支払うものです。
- 5-2. 警察指定業者の「搬送費用」の正体
警察が現場から署までご遺体を運ぶ際、民間の業者が委託を受けて運ぶことがあります。この時、警察署で「搬送代として〇〇円支払ってください」と言われることがあります。 これはあくまで「現場から警察署まで」の費用であり、そこから「自宅や安置場所まで」の費用は含まれていません。ここを混同して、「もう葬儀社にお金を払ったから、自宅までも送ってくれるはずだ」と誤解してしまうケースが多いのですが、全く別の契約であることを理解しておく必要があります。
第6章:遺体修復(エンバーミング)への架け橋
もし、故人様が大きな外傷を負っていたり、孤独死で発見が遅れたりした場合、警察からは「お顔は見ないほうがいいです」「納棺(遺体を袋や棺に入れること)を済ませてから引き渡します」と言われることがあります。
しかし、ご遺族にとって「一目会いたい」という願いは切実です。
6-1. 「見られない」を「見られる」に変える
警察専門の葬儀社は、引き取りの段階で「この状態なら、どのような修復を施せば対面が可能か」を診断します。
- 傷跡を目立たなくする復元納棺
- 防腐処置(エンバーミング)による変化の停止
- 特殊なメイクアップによる生前の面影の再現
これらは、警察署から搬送した「後」に行われることですが、その方針を決定し、適切な保護処置をしながら搬送できるのは、高度な技術を持つ専門業者だけです。
第7章:失敗しないための葬儀社選び、3つのチェックリスト
パニックの中で葬儀社を決めるのは非常に困難です。しかし、以下の3点を確認するだけで、最悪の事態を避けることができます。
「警察案件の専門チームがあるか?」 「行けますよ」という返事だけでなく、「警察署での検案料の支払いや、検案書の受け取りも代行(サポート)してくれますか?」と聞いてみてください。
「24時間365日、直接自社スタッフが来るか?」 下請けの搬送業者に丸投げする葬儀社も少なくありません。最初から最後まで責任を持ってくれる会社を選びましょう。
「安置施設の保冷設備は万全か?」 警察署から引き取った後、どこへ連れて行くのか。その場所には適切な保冷設備や、必要に応じた処置室(防腐処置ができる部屋)があるかを確認してください。
最期の尊厳を取り戻すということ
警察車両での搬送は、国家による「事務的な手続き」の一部です。そこには、故人様への愛着や、ご遺族の悲しみへの配慮が入り込む余地はほとんどありません。
警察署という冷たい場所で、止まってしまった時間を再び「弔いの時間」へと動かし始めるのが、葬儀社による引き取りという儀式です。
「警察が運んでくれない」という現実に直面し、途方に暮れている方へ。 どうか安心してください。あなたが選ぶ専門のパートナーは、警察署の重い扉の向こう側で、故人様の尊厳を誰よりも大切に受け止める準備ができています。
その最初の一歩が、残されたご遺族の「これから」を支える、確かな力になるはずです。






