ある日、離れて暮らす親に連絡がつかない。胸騒ぎがして自宅を訪ねると、部屋の中で倒れていた。すでに体は冷たく、呼びかけても反応がない。あるいは、同居している家族が朝起きてこない。寝室を覗くと、明らかにいつもと様子が違う。
こうした場面に直面したとき、多くの方が最初に119番に電話をします。そして救急隊が到着し、死亡が確認されると、そこから警察が介入してきます。ここから先の時間について、具体的に何が起きるのかを事前に知っている人はほとんどいません。
この記事は、「自宅で家族の死に直面し、警察が関わることになった」という状況に置かれた方に向けて書いています。今まさにその渦中にいる方も、将来の備えとして知っておきたい方も、この先に起こることの全体像を知ることで、少しでも不安が軽くなればと思います。
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- なぜ病院ではなく「警察」なのか
まず最も多い疑問がこれです。家族が亡くなったのに、なぜ警察が来るのか。犯罪を疑われているのか。そう感じて動揺される方は非常に多くいらっしゃいます。
結論から言えば、これは犯罪捜査ではありません。日本の法律では、医師の立ち会いのもとで亡くなった場合を除き、全ての死亡について死因を確認する手続きが必要と定められています。自宅で亡くなった場合、たとえ持病があったとしても、最期の瞬間に医師がそばにいなければ「死因不明」として扱われます。この死因を医学的に確認する手続きが「検視」や「検案」と呼ばれるものです。
つまり警察の介入は、故人に何があったのかを正しく記録し、死亡診断書ではなく「死体検案書」を発行するための法的に必要なプロセスです。ご遺族が何か疑われているわけではありません。ただ、この説明を現場で丁寧にしてくれる警察官ばかりではないため、不安が増幅してしまうのが実情です。
- 警察が到着してから起こること
救急隊が死亡を確認すると、管轄の警察署に連絡が入ります。そこから数十分で警察官が到着し、まず現場の状況確認が行われます。ご遺族は別室で待機するよう求められ、故人のそばにいることができなくなります。この時間が、精神的に最も辛い瞬間だと多くの方がおっしゃいます。
現場では、遺体の状態、室内の状況、服薬の有無、直近の健康状態などが確認されます。ご遺族への聞き取りも行われます。故人の既往歴、最後に連絡を取った日時、発見時の状況など、かなり細かいことを聞かれます。混乱している中で質問に答えるのは大変ですが、これは全て死因を正しく判断するために必要な情報です。
確認の結果、死因に不審な点がなければ、監察医または警察医による検案が行われ、死体検案書が発行されます。ここまでの流れであれば、早ければ当日中、遅くとも翌日にはご遺体が引き渡されるのが一般的です。
- 「解剖になります」と言われた場合
問題は、現場の状況確認だけでは死因が特定できないケースです。この場合、監察医や警察の判断により、解剖が行われることがあります。解剖には大きく分けて「行政解剖」と「司法解剖」の二種類があります。
行政解剖は犯罪性がないと判断されたものの、死因を医学的に確定するために行われるものです。一方、司法解剖は犯罪の可能性を完全には排除できない場合に、裁判所の令状に基づいて行われます。どちらの場合も、ご遺族の同意の有無にかかわらず実施されます。
解剖が決まると、ご遺体は監察医務院や大学の法医学教室などに搬送されます。ここからご遺族にとっての「空白の時間」が始まります。解剖の所要時間は数時間から半日程度ですが、実際に遺体が戻ってくるまでには一日から数日かかることもあります。この間、ご遺族は故人に会うことができません。
この待機の時間に、ご遺族はただ待つことしかできないのかというと、実はそうではありません。この時間こそが、葬儀社の選定や火葬場の予約、親族への連絡など、やるべきことを整理する貴重な準備期間になります。
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警察介入時に葬儀社を選ぶということの意味
通常の葬儀であれば、病院から紹介された葬儀社にそのまま依頼する方が多いでしょう。しかし警察が介入するケースでは、状況がまったく異なります。
まず、遺体の引き取り場所が病院ではなく警察署や監察医務院になります。引き取りの時間も警察側の都合で決まるため、深夜や早朝になることも珍しくありません。さらに、検視や解剖を経た遺体は、病院で亡くなった場合とは状態が異なることがあります。衣服を着ていない状態で引き渡されることも多く、死後の処置が十分に行われていないケースもあります。
一般的な葬儀社はこうした状況に慣れていません。警察署への迎えの段取り、監察医との連絡の取り方、検視後の遺体の処置方法など、通常の葬儀とは異なる知識と経験が求められます。ここに、警察介入を専門とする葬儀社が存在する理由があります。
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- 一般の葬儀社と警察専門の葬儀社では何が違うのか
違いは大きく三つあります。
一つ目は、警察や監察医とのやり取りを代行できることです。ご遺族が直接警察と連絡を取り合う必要がなくなり、遺体の引き渡し時間の確認、必要書類の受け取り、火葬許可証の手続きなどを全て任せることができます。
二つ目は、遺体の状態に応じた処置が可能なことです。検視や解剖を経た遺体は、生前のお顔とは異なる状態になっていることがあります。専門の処置技術を持つスタッフであれば、清拭はもちろん、目や口を自然な状態に整え、生前に近い姿でお別れができるよう最大限の対応を行います。損傷が激しい場合には、専門の遺体修復師と連携して対応することも可能です。
三つ目は、経験に基づいた「先読み」ができることです。警察から連絡があった段階で状況をお聞きすれば、検視で済むのか解剖になりそうか、引き渡しはいつ頃になるか、火葬場の予約はどのタイミングで取るべきかといった見通しを、過去の事例に基づいてお伝えすることができます。先が見えないことが最大の不安であるこの状況において、次に何が起こるかを事前に知れるだけで、気持ちの持ちようはまったく変わります。
- ご遺族が「やってはいけないこと」と「やっておくべきこと」
警察介入の葬儀で、ご遺族が陥りやすい失敗がいくつかあります。
まず、慌てて最初に見つけた葬儀社に即決してしまうことです。警察から「葬儀社を手配してください」と言われると、一刻も早く決めなければという焦りが生まれます。しかし、警察が遺体を引き渡すまでには必ず時間があります。その間に、警察介入の実績がある葬儀社に連絡を取り、状況を説明して見積もりを確認する余裕は十分にあります。
次に、費用の内訳を確認しないまま進めてしまうことです。警察介入の葬儀では、通常の葬儀費用に加えて、警察署までの搬送費、監察医への費用、遺体の処置費用などが発生します。これらが最初の見積もりに含まれているのか、別途請求されるのかを必ず確認してください。
逆に、やっておくべきことは「誰かに頼る」ことです。身内の急死という事態に直面したとき、全てを一人で抱え込もうとする方がいます。しかしこのような局面でこそ、専門家に頼ることが最善の選択です。葬儀の手配だけでなく、何をいつまでにやるべきかという全体のスケジュールを整理してもらうだけでも、頭の中の混乱は大幅に収まります。
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「まさか」は誰にでも起こりうる
この記事を読んでいる方の中には、今まさに警察からの連絡を受けたばかりの方もいるかもしれません。あるいは、高齢の親が離れた場所で一人暮らしをしていて、万が一のことが頭をよぎっている方もいるでしょう。
日本では年間およそ17万人が自宅で亡くなっており、その多くに警察が関与しています。これは特殊な出来事ではなく、誰の人生にも起こりうることです。そして、そのとき最も必要なのは、この分野に精通した専門家の存在です。
村岡葬研葬儀社は、警察介入の葬儀を専門に400件以上の実績を持つ葬儀社です。変死、急死、自殺、事故、事件、孤独死。あらゆる警察介入のケースにおいて、ご遺体の引き取りから安置、処置、火葬まで一貫して対応しています。47都道府県どこからでもご依頼いただけます。
深夜でも早朝でも、電話一本でご相談を承ります。「何をすればいいかわからない」──その一言だけで構いません。次に何が起こるのか、何をすべきなのかを、経験に基づいて一つひとつお伝えします。